仕事上での大きなイベントがひとつ終わり、昼間にみんなで心斎橋でお茶を。
簡単な打ち上げ、とまではいかないが、13人が飛び込みでお茶できる大バコなんてあったっけ? みんなが右往左往するなか、僕がその店を見つけた、というか思いついた。それが今日いちばんの僕の働きだった気がするなー。
まあ、スイーツのお店には詳しいので。梅田と心斎橋は庭だと吹聴しているんだけど、その面目が今日も保たれた形。

ブキッシュな女の子から『都会のトム&ソーヤ』を勧めてもらった顛末は、そのイベントに絡む。
中学受験生の保護者を対象とした大掛かりな説明会を毎年この時期に実施している。今年は心斎橋でホテルの会議室を借りて、やった。
水曜日までずっと死んでいたのもその準備のせい。
その会に配る資料のひとつとして、4年生や5年生の生徒に勧める読書リストを挟んでいる。
「うちの子、ぜんぜん本読まないんです。なんかお勧めの本とかないですか、先生」
と訊かれる教員は少なくないだろう。僕も、かつてはしょちゅう訊かれたけど、その問いに対する答えは、はっきりいってない。生徒に限らない、自分から読まない、つまり読む習慣のない人が、勧められた本なんか読めるわけがない。
そういう場合の多くは、
「一緒に本屋にいって、本人か面白そうだなと思ったヤツをまず買ってやってください」
と答えてきた。いまもそう思っている。読書なんて他人から勧められてするものではなく、他人から勧められて面白いと思えるものでもない。まず自分が「面白そうだな」と思わないと。話はそこからだ。


読書の習慣をつけるために環境は大きいと思う。
いちばん簡単なのはお母さん、お父さんが楽しそうに本を読むことだろう。親がTVしか見ないのに、本を読もうとする子供はいない。そのきっかけがない。

父親が本を読む人だった。読む人は本に詳しい、詳しいと与えるコツも判るらしい。
母親は少しも読まない、駄目だなー、と思っていたけど、よくよく思い出してみると母親は夕食時にラジオをつける人だった。食事時にTVはつけない、ラジオを聴きながら食事をする、というのが長い間の習慣だった。そうか、正直、母親から得たものってなかったように思っていたけど、もしかしたら音楽を聴く素養みたいなものはこのときに母親から得ているのかも知れない。

他人に勧められて、習慣のない読書に勤しまされる。
強制的に読書させられるというのはさぞかし苦痛だろう、そうやって生徒に本を勧めることには懐疑的だが、でも保護者から少しのニーズでもあるのなら看過は出来ない。そう思って2年ほど前に作ってみた。要は、われわれ教員の推す読書ガイドである。
いざ着手してみると、意外とみんな本を読んでいなかったり、という発見もある。僕らが面白いと思っていた本が結構、絶版になってもう入手困難だったり、これは僕自身のことだけど、やはり小説しか読んでいなかったり。
総合的な、理系に寄った随筆やなんかもちゃんと含んだ、現代性も古典もフォローしたいいリストを作るのはなかなか難しい。作業として楽しいけれども。

現代的なエッセンスも含む、という点でそのブキッシュな女の子に助けてもらったのだ。
休憩時間にちょっと、と呼び出し、
「さっき何、読んでたの?」
と訊ねた。そうやって呼ぶことはほとんどないので最初は不安気な訝し気な顔をしていたけれども、これこれこうでキミらが最近どんな本を読んだりしているのか教えて欲しいんだというと、顔がぱあっと輝いたのがひどく印象的だった。